サクラと純菜は金剛鈷印を結び同時に詠唱を始めた サクラの右手は秀人へ純菜の右手は弾十郎へとかざしている
サクラと純菜は同時に言葉を紡ぐ それは薬師にとって基本となる言葉
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
二人のかざされた手が同時に光を帯びその光は秀人と弾十郎を優しく包み込む 薬師の力その基本となる技 活身を使う
「オラオラ 来いよ!」
弾十郎は大蜘蛛を挑発するが大蜘蛛はその挑発にはのらずサクラへ向けて毒針を飛ばしてきた
風を切り飛んでくる毒針だが秀人がサクラの前に立ちふさがり毒針をうち落としていく
刀を器用に動かし毒針をうち落としていくのだが…
「むぅ!」
秀人の刀をすり抜けた毒針が右肩に突き刺さる だが秀人は倒れることなくサクラのを守るように立っている
「本郷さん!」
サクラはすばやく金剛鈷印を結ぶとふたたび右手を秀人へとかざす 使用する技は活身
大蜘蛛の毒針は生命力を奪い取っていく だがサクラや純菜、薬師の術活身は毒針とは逆、生命力を活性化させる その活身の光がまた秀人を包む
攻撃のじゃまをされたと思った大蜘蛛は秀人へと向かって襲いかかる 秀人の顔は苦痛にゆがんでいた だがそれでも膝を折ることなくサクラを守るためその両足に力を込める
しかし大蜘蛛の攻撃は秀人にはとどかなかった
「お前の相手はこっちだろうが!」
弾十郎が秀人と大蜘蛛の間にわって入り大蜘蛛に切りかかる 弾十郎の持つ刀は純菜と同じ小刀 弾十郎は近接戦闘を得意としている そのため相手に接近する必要がある
長い武器ではその力を存分に発揮できない だが小刀ならばその心配もない
弾十郎は体当たりをするように小刀を大蜘蛛へと突きたてる しかしガキンという音と共に弾十郎の攻撃は弾かれてしまった
「な、なんだこいつ硬てぇ」
「弾さん退いて!」
そう純菜がいいその右手は大蜘蛛へと手をかざしてある 純菜の右手は活身の時と違い黒い光を放っていた
薬師は生命を操る存在 ならばその逆も心得ている そう相手の力を削る力
それは呪詛 大蜘蛛の真上に黒い霧状のものが現れる その黒い霧はとぐろを巻きながら大蜘蛛へと降りかかる 呪詛の名は混沌 あらゆる能力を下げる技だ
「今だ!一気に畳みかけるぞ!」
弾十郎と秀人は同時に大蜘蛛へと切りかかった 秀人は三連撃そして弾十郎は破砕撃を大蜘蛛に撃ち込む 大蜘蛛は吹き飛び壁に激突した
「よっしゃ!とどめだ!」
弾十郎は追込み撃を大蜘蛛に叩き込む しかし弾十郎の攻撃は大蜘蛛にとどかなかった
キシャーと大蜘蛛が吼え針を弾十郎へと飛ばす 弾十郎は攻撃態勢を取っていたのでその針を避けることもできずまともに受けてしまった
「こんなもの・・・ う!か、身体が動かん…」
大蜘蛛の飛ばした針はしびれ針だった 痺れ針を受け弾十郎は金縛りにあったように動けなくなっていた
さらに大蜘蛛の攻撃が弾十郎を襲う
「危ない!」
大蜘蛛の攻撃が弾十郎に当たる前に秀人の太刀が大蜘蛛を捕らえた 刃の部分ではなくみねの部分が大蜘蛛を打ち抜く
みね打ち 普通の人間がそれをすればただのみね打ちだが 侍が使えばそれは技になる
自分の気を太刀に乗せ相手にぶつける その効果は相手を痺れさすものだがその一瞬が命取りになる その一瞬を見逃す侍など何処にもいないのだから
しかしこのときのみね打ちは弾十郎を助けるためのものだ 大蜘蛛の動きを止めた隙に弾十郎をつれ大蜘蛛から距離を取る
大蜘蛛から受けた痺れ針もそれほど長い効果はなかった 大蜘蛛から離れるとすぐに回復し弾十郎は大蜘蛛へと小刀を向ける
「こいつしぶといな、しかも硬てぇときてやがる さてどうしてもんかな…」
「なんにしてもやるしかないでござるよ 弾どの!」
「そうだな 真ちゃんも助けないといけないしな」
弾十郎と秀人は手に持つ武器を握りなおすと大蜘蛛へと向かう
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