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浜名湖底洞穴編

くの一はゆらりと立ち上がるとユダの側へ行き倒れているユダを足で小突き始めた

「こらユダ起きろ! もう動けるでしょ!」

言われてユダは動ける自分を確認し素早く立ち上がった 立ち上がるとすぐに小太刀を素早く抜き構える

「だ、誰か知らないが感謝する」

「は?まぁいいそれよりも脱出するぞ! いいな」

「ここから出られるとでも思っているのか!」

声の主はそう言ってきたが くの一は平然と声の主へと向いている覆面をしているのでその表情はわかりにくいが 見えている目が凄まじいまでの殺気を放っていた  

「ここまで入って来れたんだ 出られないわけないだろ」

くの一はユダに小声で囁いた 隙を作るそれで脱出するぞと
ユダは頷くこの場ではこのくの一にしたがうほか手はなかった 周りには亡者達が迫ってきている

「では ここは一旦引かせてもらおう!」

そういうと くの一は煙球を足元に投げた
部屋に煙が充満する おのれ!と言いながら声の主は手を横に払ったすると突風がおこり煙を吹き飛ばす
だがそこにはもう二人の姿はなかった

「逃がしたか…まぁいい術もあと少しで完成だ これが終われば・・・ふふふ」

声の主はまた祭壇の前へと戻っていった

ユダ達は出口へと向って走っていた 煙球を使うと同時に忍びの術、神速の術を使いその場を脱出したのだ
途中で出会った亡者どもを振り切り ユダ達は洞穴の入り口へとたどり着いた
ぜーぜーと肩で息を切らしているユダに対しくの一は平然とした顔でその場に立っていた 

「誰だか ハァハァ知らないが感謝する 助かった」

「ん、まだ言ってるのか? ホントに誰か分からないの?」

「えぇと どちらさまで?」

「ボケたか・・・ まぁいいわ」

くの一が覆面を取る ユダはその顔に見覚えがあった 同じ忍務をおこなったこともある人物
そしていつの間にかいなくなり消えてしまっていた人物だった

「ま、まさか…真希さんか!!いつ帰ってきたんだ!?」

「やっと気がついたか…遅いんだよまったく…」

このくの一の名は 天星真希
徳川に仕える忍である それと同時にある義賊集団のお頭でもあったのだが今は引退し弟にお頭の座を渡している
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浜名湖底洞穴編

その部屋のようなところには祭壇があり周りには紐が張り巡らされている この紐は結界であろうか?
そしてその祭壇を取り囲むように数人の人影が見えた
祭壇には誰かが横たわってるのが見える それを取り囲むように人影が立っている

(なんだ…何かの儀式か…?)

ユダは固唾を呑んでその祭壇を見ている数人の中の一人が詠唱を唱えていた
それが止まると人影の一人が一歩祭壇に進むと かすかにそして語りかけるような声が聞こえてきた

「もう少しだ…もう少し…」

何がおこっている?ユダには分からなかったが何かとんでもないことをしていることだけは分かる
この場で殺ってしまうか?しかし人が多すぎるか…仕方ないここで何がおこっているのか見極めそれを報告するべきだろう
そうして見ているとまた祭壇の前にいる人物からの声が聞こえてきた

「どうやらネズミが入り込んだらしいな・・・」

ユダは気づかれたと思い反射的に後ろへ飛ぼうとした、だが自分の意思に反して身体は動かなかった

(なんだ? なぜ動かせない?)

ユダは必死に身体を動かそうとしているのだがやはり動かなかった 声の主は右手を高々と上げた
するとその手の上に炎の球体が出現した、そして手を振り下ろすとその炎の球体はユダ目がけて飛んで来た
炎は大きさと速度を上げユダへと迫っている しかしユダは体を動かすことが出来ない
(やられる!)
鍾乳石が砕け散り辺りは粉塵にまみれる、一部の石は炎によって溶けていた
この一撃をまともにくらってまともに生きている人間はまず一人も居ないだろう
だがユダは生きていた、ユダともう一人ユダの側に立つ人物がいた

「まだネズミがいたか・・・」

炎の球体がユダに直撃する瞬間 その人物がユダの体に蹴りを入れ弾き飛ばしたのだ

「ふん!たんなる調査だと思って来てみれば…怪しさ満開の奴がいるじゃないかよ」

ユダを蹴り飛ばした人物は覆面をかぶり小刀を2本持っている そう、ユダと同じような格好だ
だが違うところがあるこの人物は女性 そう、くの一である

浜名湖底洞穴編

三河ー遠江間の関所からほど近いところに浜名湖湖底洞穴はある 地図で【りーハ】の辺りだ
そこへ神代ユダは来ていた、浜名湖湖底洞穴は巨大な鍾乳洞で出来ており光ゴケこおかげで中はぼんやりと見える

「ここか…何か変な気配はするが」

ユダは忍びの術を使い姿を消したまま浜名湖の奥へと入って行く、聞こえるのは水滴が落ちる音だけ ユダは音もなく駆け抜けていた

アァァアァァァ

ユダの足が止まった かすかに聞こえるうめき声のようなものを聞いたからだ

「……確かめてみるか」

ユダは声の方へを駆けて行った、だんだん声が大きくなってくる呻きとも叫びともつかない声が近づいてきた

「な、なんだこれは!」

ユダが見たものは亡者だった 足を引きずり蠢いているその亡者は1体ではなかった 中には蛇に撒きつかれている亡者もいる

「まさかこんなにいるとは…」

その蠢く亡者達の間から奥へと続く道があるのが見えた

「この奥にまだ何かあるのか?」

ユダはその亡者達をかいくぐりさらに奥へと向っていくすると大きな湖が見えてきた、だがそこにもやはり亡者達が徘徊している

「ここはやばいな… こんなにいたとは…」

・・・・如・・・・ ・・導・・・・・・ ・・成・・・・

ユダは人の声を聞いた まさかこんなところに人がいる訳がない、そう思ったが確かに人の声であった

「まさか・・ 生きている人間がいるのか?」

その声は湖の奥の方から聞こえてくる
ユダはさらに奥へと向っていった、湖を回り込むように道が出来ておりその道をユダは駆け抜けていった
(ここから聞こえる)
そこは部屋のようなところであった そしてそこに人の気配もする、ユダは慎重にその部屋のような場所を覗き込んだ

浜名湖底洞穴編

岡崎へ帰ると薬研へと向かうサクラと純菜 採取してきた物を早速調合しようと話しながら鍛冶場の前を通りがかると弾十郎が鍛冶場の前でぼ~っとしていた
あまりに気の抜けた顔をしている弾十郎が心配になりサクラは声をかけてみた

「あら? 弾さん何してるのこんなところデ?」

「あぁ 純菜ちゃんとサクラちゃんか いや、ちょっと考え事をね」

「何かあったの?」

「ホントに何でもないんだが 真ちゃんがいないと静かだな… ってね」

「あぁ 真さん試験のために浜名湖行ってるんでしたっケ」

「うむ、まぁ大概のことは真ちゃん一人でも大丈夫だとは思うんだが」

「心配なんだ」

「そ、そんなことないぞ! 心配なんてしてるもんか!」

「またまた~ 顔に心配だって書いてますヨ?」

「なにやら楽しそうですね」

ケタケタと笑っていたら一人の男がサクラ達に近づいてきた 束帯を着込み一目で陰陽寮の人間だとわかるその格好 落ち着いた雰囲気を放つ人物だった

「おぉ 凪さんじゃないか! しばらく見ないと思ってたが帰ってきたのか」

この男の名は 樋口凪麻呂
徳川家陰陽寮に所属する陰陽師である

「ちょっとヤボ用でね 三河を離れてたんですよ」

「そうかい ヤボ用じゃしょうがねぇな… おっとそうだ紹介しとこうか この子は御堂サクラちゃんだ 伊予から修行しに来たんだってよ」

「伊予から… それは遠いところから 初めまして樋口です」

凪麻呂が握手を求めて来たのでサクラも手を出し初めましてといいながら凪麻呂の手を握った
その凪麻呂の手からサクラは何か陰のようなものを感じていた

(この違和感はなんだろ?)

薬師を志 医術を覚えるに当たってサクラは人の身体には目には見えない流れのようなものがあることを感じるようになっていた
その感覚は治療の際いつも役に立っていたのだが 凪麻呂から感じるそれは何か違うもがあった
凪麻呂の手を見つめサクラはその違和感の正体を探ろうとした時 純菜の一言で遮られた

「サクラちゃん 何時まで握ってるの?」

純菜の声にハッとして凪麻呂の手を離した

「サクラちゃん ひょとして…」

「おぉ なんだサクラちゃん凪さんに惚れたか?」

サクラはあわてて否定した だが弾十郎と純菜はニヤニヤと面白がってサクラをからかっている

「じゃあ僕はまだ用があるので 失礼するね」

「おぅ 今度旅の話を聞かせてくれよ」

うなずくと凪麻呂は岡崎城の方へと歩いていった サクラは凪麻呂の後姿を見つめていた
そしてサクラは考えていた、あの感覚… 前に一度感じていると
だがそれをいつ感じたのか思い出せないでいた

浜名湖底洞穴編

「止めてくれないからこんなことになったんでしょ!」

禮華が謙一に怒鳴っていた、まぁまぁという謙一の声も禮華には聞こえていないらしい
禮華と謙一がぎゃあぎゃあ騒いでいると倒れていた刺客が立ち上がり禮華に小刀を向ける

「貴様か! 貴様がやったのか!」

ものすごい殺気を込めて小太刀を禮華達に向けている 向けられているのだが禮華はそれを見てさらに謙一に怒鳴りだした

「ほら、怒らせちゃったじゃない!」

「これは… 禮華がぶつかるから…」

追いはぎ達も加わり禮華達は包囲されていた だが禮華達はまったく危機感を感じていないそれどころか二人でまだ言い合っていた

「あぁ・・ 殺気だってるよ・・」

ため息まじりに謙一が言っている それでも未だに余裕の二人
刺客の殺ってしまえとの声と共に追いはぎ達が禮華を襲う

「あらやだなんだか殺気だってる ふぅ謙ちゃん後で何かおごってもらうからね!」

そういうと禮華は一気に刺客との間合いを詰めた いきなり間合いを詰められ驚く刺客
その刺客に禮華は一言だけいった

「遅いのよ・・・」

キラっと何かが光ったように見えた それは禮華の持つ太刀の光だった
禮華は抜刀術を使って刺客を倒す 他の追いはぎ達は謙一の手によりあっとい間に倒されていた
サクラ達は呆然としていた、倒せないかもしれないと思っていた刺客がこうもあっさりと倒されてしまうとは
呆然としていたサクラ達に禮華が近寄ってくる

「貴女達はここで何をしていたの?」

「あ、私たちはここで採取を・・」

「ふむふむ でもこんな輩がいるから気をつけてね」

禮華は刺客を足で小突きながらそう言っていた そしてじゃあねというと岡崎の方へと走り去っていく
サクラ達は唖然とした顔でその場にかたまってしまった 嵐にあったような感じだった

「私たちも今日は帰ろっか?」

あの二人は一体何者だったのだろう? そう思いながら純菜と一緒に岡崎へと向かった


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