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浜名湖底洞穴編

岡崎へ帰ると薬研へと向かうサクラと純菜 採取してきた物を早速調合しようと話しながら鍛冶場の前を通りがかると弾十郎が鍛冶場の前でぼ~っとしていた
あまりに気の抜けた顔をしている弾十郎が心配になりサクラは声をかけてみた

「あら? 弾さん何してるのこんなところデ?」

「あぁ 純菜ちゃんとサクラちゃんか いや、ちょっと考え事をね」

「何かあったの?」

「ホントに何でもないんだが 真ちゃんがいないと静かだな… ってね」

「あぁ 真さん試験のために浜名湖行ってるんでしたっケ」

「うむ、まぁ大概のことは真ちゃん一人でも大丈夫だとは思うんだが」

「心配なんだ」

「そ、そんなことないぞ! 心配なんてしてるもんか!」

「またまた~ 顔に心配だって書いてますヨ?」

「なにやら楽しそうですね」

ケタケタと笑っていたら一人の男がサクラ達に近づいてきた 束帯を着込み一目で陰陽寮の人間だとわかるその格好 落ち着いた雰囲気を放つ人物だった

「おぉ 凪さんじゃないか! しばらく見ないと思ってたが帰ってきたのか」

この男の名は 樋口凪麻呂
徳川家陰陽寮に所属する陰陽師である

「ちょっとヤボ用でね 三河を離れてたんですよ」

「そうかい ヤボ用じゃしょうがねぇな… おっとそうだ紹介しとこうか この子は御堂サクラちゃんだ 伊予から修行しに来たんだってよ」

「伊予から… それは遠いところから 初めまして樋口です」

凪麻呂が握手を求めて来たのでサクラも手を出し初めましてといいながら凪麻呂の手を握った
その凪麻呂の手からサクラは何か陰のようなものを感じていた

(この違和感はなんだろ?)

薬師を志 医術を覚えるに当たってサクラは人の身体には目には見えない流れのようなものがあることを感じるようになっていた
その感覚は治療の際いつも役に立っていたのだが 凪麻呂から感じるそれは何か違うもがあった
凪麻呂の手を見つめサクラはその違和感の正体を探ろうとした時 純菜の一言で遮られた

「サクラちゃん 何時まで握ってるの?」

純菜の声にハッとして凪麻呂の手を離した

「サクラちゃん ひょとして…」

「おぉ なんだサクラちゃん凪さんに惚れたか?」

サクラはあわてて否定した だが弾十郎と純菜はニヤニヤと面白がってサクラをからかっている

「じゃあ僕はまだ用があるので 失礼するね」

「おぅ 今度旅の話を聞かせてくれよ」

うなずくと凪麻呂は岡崎城の方へと歩いていった サクラは凪麻呂の後姿を見つめていた
そしてサクラは考えていた、あの感覚… 前に一度感じていると
だがそれをいつ感じたのか思い出せないでいた
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