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凪麻呂は袖に手を入れると一枚の紙を取り出す それは式符と呼ばれるものだった
凪麻呂が袖から取り出した式符は鮮やかな紅色をしている その式符を人差し指と中指ではさみ額へと持っていく
凪麻呂は瞳を閉じると集中する 式符の力を解放させるために
「赤と力を持つものよ その姿を今ここに現し我が命に従え」
澄んだ声を響かせると凪麻呂は式符をスッと前方に放った
投げられた式符は地面に落ちると同時に光を放ち始める
式符から出る光は四方に拡がって五芒星を形作っていった その星の中心に陰陽図が描かれている
ドン!という音がし五芒星から光が立ちのぼる 洞穴の天井まで届きそうな光が拡がっていった
その光の柱の中に何かが地面から湧き出てくるのが見えた 光の中に何かが居る
純菜は何がおこっているのかわからず 目の前に立ち上る光の柱をぼーっと見ていた
光が収まってくると中にいたものが姿を現した 赤く大きな体をもち頭には角が生えている
凪麻呂がそれのすぐそばに立っているのだが まるで大人と子供のようだ
このバケモノは一体なんだろと見ていた純菜だったが ある一点に釘付けになった
それはそのバケモノの手 この手に見覚えがある 赤く大きく鋭い爪の生えたその腕
これはさっき凪麻呂の腕からまるで飛び出してきたかのようなもう一つの腕にそっくりだ
「さて準備が整いましたよ純菜さん ってあれ?純菜さん?」
「あ、あぁ はい…な、凪さんこれは一体なんです?」
純菜は凪麻呂のそばに立つ巨人を見上げていた
「こやつですか?これは私の式神、実際はあと4ついて全部で5つの種類の式神がいるのですが 同時には召喚できないので で、その巨人は私が持つ式神の中でもっとも力に特化したものです」
「これが式神……」
「ま、もっとも見た目はただの鬼にしかみえませんがね」
そういいながら凪麻呂も純菜と同じようにその巨人、鬼を見上げていた
さっき凪麻呂から出ていた腕はこの式神のものだったんだ 純菜は鬼を見上げながら考えていた
主を守るために腕だけを出してきたのだろう でも、召喚者凪麻呂の意識がないままこの式神は出てきていた
式神がどういうシステムで出てきているのか純菜にはわからないためなんともいえないのだが
「純菜さんどうしました?ほら急ぐのでしょう?」
「え?あ、えぇ 行きましょう凪さんみんなを助けないと」
ガオォオオオォォ!と鬼が鳴き亡者の群れへ向かって歩き始める 純菜と凪麻呂はその鬼の後ろにつき同じように歩きはじめた
ドスンドスンと音を鳴らし鬼が歩いていく 一番近くにいた真鉄がその姿に気がついた
「うぉ!?なんだ新手か!今までのと違うぞ」
火縄銃の銃口を後ろから歩いてくる鬼へと向ける と、そこで鬼の足元に純菜の姿があることに気がついた
「お、おい純菜ちゃん危ない 踏み潰されるから早く離れるんだ!」
「真さん大丈夫よ これは凪さんの式神なんだって だから敵じゃないわよ」
「しき…がみ…?ってなんだ よくわからんがとりあえず敵ってことじゃないんだな?」
「えぇそうですよ これは私達の味方ですなので安心してください」
「お、凪さんじゃねぇか もう動いても大丈夫なのか?」
「はい なんだかご迷惑をかけたみたいで申し訳ない」
「そんなこたーどうだっていい それより手を貸してくれ後から後から沸いてくるからキリがねぇんだ」
凪麻呂は亡者の群れへ向け指を差すと鬼はその方へ歩き始め突入していった
純菜は辺りを見渡す そばには凪麻呂と真鉄 その近くには秀人 少し離れた場所で禮華と謙一が戦っている
「ここならなんとかいけそうだわ それじゃ私も始めるわよ」
純菜は剣印を結び念を込め始める とりあえず今はこの場にいる人に治療をしないと
そう思ってはいるのだが 今この場にいない二人のことが気になる
二人はどこにいるんだろう?そう思ったとき突風が吹いてきた
目の前で繰り広げられる戦闘、その戦闘を純菜は凪麻呂を介抱しつつ見ていた
秀人と真鉄、そして禮華と謙一がそれぞれ別の場所で戦っていた
そして4人は戦いつつ純菜のそばから離れていく あまりに離れていく4人をみて不安になってきた
「このまま離れちゃうと治療ができなくなるわ」
薬師、僧の治療は治療をする対象者がある程度の距離でないと使えない
しかも薬師は媒介として水を使っている以上その距離は限定されてくる
このまま離れて行っちゃうといざというときに何も出来なくなっちゃう しかし、今の純菜は動くことができない
凪麻呂がいまだに目を醒まさないのだ 秀人や真鉄達が頑張っていてくれているおかげで純菜がいる場所まで亡者が来ることはないとは思うが
それでも純菜は倒れている人をそのまま放置して離れることは出来なかった
「(どうしたらいいのよ…みんな離れていっちゃう)」
そのあいだにも真鉄達との距離は徐々にだが離れていっている
純菜はじっと凪麻呂の顔を覗き込む しかし凪麻呂はまだ目を醒ましそうになかった
そんな凪麻呂に純菜は声をかける
「凪さん起きて 起きてよ凪さんみんなが…このまま離れちゃうとみんなが危ないのよ」
このまま凪麻呂が目を醒まさないということはないだろう
サクラと一緒に凪麻呂を診たとき 外傷もなくただ疲労しているだけだろうというのがサクラと純菜、二人の診断だった
だがいつ目を醒ますのかまではわからない 純菜は凪麻呂の顔を覗き込みまた声をかけようとしたそのとき
ボコンという音を聞いた 純菜は音のする方を見てみるすると地面が盛り上がっているのが見えた
まさか?そう純菜が思った瞬間、ボコッという音と共に腕が飛び出してきた
紛れもないそれは亡者の腕だった 亡者は地面を押し広げそこから出てこようとしていた
今、この場にいるのは眠っている凪麻呂と純菜のみ 他のみんなは離れた場所で戦っている
助けを呼ぶわけにはいかない そうでなくても亡者の数は多いのだ
(ど、どうしよう…凪さんを動かすわけにもいかないし)
ふと純菜は自分の手に目を落とすとそこには小刀が握られている
ここは私はなんとかしなきゃいけない、なんとしても凪さんを守らないと
純菜は小刀をギュッと握ると地面から這い出てきている亡者へと斬りかかっていった
渾身の力を込め純菜は小刀を亡者へと振り下ろす
地面から這い出てきている亡者はすでに上半身ま出てきていたが純菜はかまわず小刀をふるう
しかし純菜の小刀は亡者の腕によって簡単に受け止められてしまう
そして腕に食い込んだ小刀を純菜に押し返すように亡者は腕をふるった
押し返されバランスを崩した純菜はしりもちをついてしまう そして何事もなかったかのように亡者は地面から這い出てきている
体制を立て直さないと、そう思い純菜はしりもちをついた状態でズリズリと後方へと下がっていく
とりあえず距離をとらないとそう思ったとき下がっていく途中で手に何かが触れる
純菜の手に触れたものそれは凪麻呂の手だった 純菜はハッとするこれ以上は下がれない、私はこの人を守らないといけないのだ
純菜はその場で立ち上がろうとしたのだがすでに地面から這い出てきた亡者が目の前に迫っていた
亡者は腰に手を伸ばすとその腰にある太刀を抜き放つ 亡者はその太刀を大きく振りかぶった
それを見た純菜は頭をかばうように両手を上げ亡者の太刀を受け止めようとしていた
さきほどの状態と逆転した形になっている
だが純菜は亡者と違い生身だ、しかも純菜は薬師としての技はあるが 槍術、体術といった体を使った技は不得意だった
この場合、小刀で受け止めるはずなのだが純菜にはとっさにその判断が出来なかったのだ
ギュッと目をつぶり両手に力を入れる そして迫り来る亡者の太刀の衝撃と痛みを覚悟したそのとき
ガキン!という音が走り抜けた
その音は純菜のそばでおこった 一体なにがおこったのか?純菜は目を開くと音のする方をみた
そこにあったのは腕 しかしそれは人間の腕ではなかった
赤く、大きく、するどい爪がある腕これは一体なんなのか?純菜は恐る恐るその腕を追うように振り向いた