「うぉ、なんだと!?極みが消えたっ!!」
弾十郎の身体を包み込んでいた青い闘気もかき消されていた、一体死霊使いがどのような方法を使ったのか分からないが弾十郎とサクラに施されていた術は完全に破壊されてしまっていた
「ふむ…そのような術まで使うのですか奴らは……」
「大臣!落ち着いて分析してないの」
「いえいえまおさん、これでも十分動揺しているのですが?」
「それで?」
「はい!」
洋士が元気よく返事をしたところで後方に下がっていた堕天女が妖しげな動きを見せる
そのことに葵は気がついていたのだが死霊使いを相手にしているため手出しできない
その堕天女の視線がキッ!と誰かを射抜く、その視線の先にいたのはまおであった
「うっ!?」
堕天女の眼光に当てられまおの身体はぴくりとも動けなくなってしまった
その瞬間、弾十郎を相手にしていた水軍霊が弾十郎をすり抜け攻撃対象を後方にいるサクラ達に変更した
しまった!と思った弾十郎だったが水軍霊を追いかけることは出来なかった、なぜなら猛然と迫ってきた堕天女が弾十郎の動きを止めていた
迫ってくる水軍霊にサクラは戸惑う、しかしそれも一瞬のことサクラは迫ってくる水軍霊に十字槍を向ける
今、ここにいる3人の中でまおは動けない、そして洋士も近接戦闘は不得意だろう
今ここで近接戦闘が出来る者はサクラだけ
十字槍を構え水軍霊を迎え撃とうとしたのだが思っていたより水軍霊の動きが早かった
いきなり迫られ対処が遅れたのだがなんとか初撃を弾く、しかしそれで水軍霊の動きが止まるはずがない
2撃、3撃と繰り出される水軍霊の攻撃をなんとかいなしながらかわしていたのだが、徐々に押されていく
虎裁との鍛錬のおかげで槍術の腕も上がったと思っていたのだが鍛錬と実戦とでは勝手が違う
そしてここ浜名湖に来てからも自分の手で戦うということはなかった、弾十郎や真鉄に護られていたからだ
なんとかしのいでこの亡者を下がらせないといけないのだが、死者とはいえかなりの実力をもつ水軍霊
サクラの実力では防戦するだけで精一杯だった
死霊使いを相手にしていた葵がくるりと振り向き死霊使いに背を向ける
「ユダ!ここは頼んだよ、あたしゃまお達を助けてくる」
ユダは返事はせず葵を追いかけようとした死霊使いを蹴り飛ばすことで返答した、葵はサクラ達のもとへと駆け出す
走りながら様子を見ているとサクラは何とか水軍霊の攻撃をしのいでいる、しかし今のままではやられるのは時間の問題だ
もしあの子が虎裁の言っていたサクラなのならこの程度ではないはずだが……
そう思い見ていたのだが動きがぎこちない、どうやらいきなりのことで混乱しているようだ
それならばと葵は声を張り上げた
「サクラ!旋槍、続いて穿閃の壱!」
葵の声が聞こえたと同時に身体が反応していた、サクラは水軍霊の太刀を槍で絡め取り地面へと叩き落す
そしてすぐさま槍を返し水軍霊の腹へと槍を突きたてた
突然のサクラの動きに水軍霊はなすすべもなく貫かれている、その水軍霊へ葵は容赦なく薙刀を叩き込みながら強引に下がらせた
「ふむ、やれば出来る子じゃないか、虎裁が褒めるだけのことはあるってことだわね」
「え?葵さん虎裁さんを知っているノ?」
「えぇ、よく知っているわよ、それよりここはあたしに任せて弾に活を」
「わかりました、お願いしまス」
サクラはすぐさま剣印を結び弾十郎へと活身を施す、葵は下がらせた水軍霊に再び薙刀を叩き込んでいく
しかし先ほどの不意打ちの一撃とは違い水軍霊も応戦してくるのだが、手数で葵が勝り一気に水軍霊を押し込んでいった
弾十郎の近くまで押し込み横に並ぶ
「すまんな葵さん、助かった」
「礼はいいからちゃんと護りな、次へましたら承知しないよ!」
「おうさ!」
ユダと戦っていた死霊使いだったがまたしても口を大きく開く、その口からは黒い煙のようなものが漏れていた
何かやる気だそう思っていたのだが一歩遅かった、死霊使いが黒い煙の塊のようなものを吐き出す
それが弾十郎の足元に落ち煙玉のように黒い霧が拡がっていった
「な、なんだこの臭いは!?」
その黒い霧はサクラ達のもとにまで拡がって来ている、あまりにひどい臭いのために思わずサクラは鼻を押さえてしまう
臭いに反応するかのように弾十郎、まお、銃、ユダの手に何かの紋様なものが浮かび上がっていた
紋様は何かの呪いのように少しづつ拡がっていく、まおはその紋様が浮かび上がったと同時に堕天女による眼光の呪縛から解放されていた
「うぅ…なんとか動けるようになったわ、でもこれは一体?」
「わからないでス、でもちょっと待ってくださイ……」
まおの手に浮かび上がった紋様をサクラはじっと見つめる、そこから気の流れがだんだん侵蝕されていくのが見えた
このままでは体力を削られていずれは死に至る、サクラは印を結び念を込める
「解呪!」
バシュ!っと一瞬だけみんなの身体が光に包まれる、しかしまおの手の紋様が消えることはなかった
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