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疾風刃雷

しばらく歩いていると関所が見えてきた 摂津和泉と大和を繋ぐ関所
3人は何事もなく関所を越え大和へと入って行く 大和へ入ると街道は北へと向かっていたのだが
七海の提案で街道ではなく小さな丘陵が続く道とはいえない場所を選んで歩いていく

「ここは街道よりもこっちに行ったほうが早いんですよ」

そう言いながら七海は歩いていく その歩みに迷いがないところを見ると七海は何度かこの大和の大地を歩いているのかもしれない
辺りは見晴らしがいいので何があっても対処できるだろう しかし隠れるところもないのでその点が不安ではあるが…
一緒に歩く潤とたわいのない会話を交わしながら歩いていくと後ろからドドドドドという音が聞こえてくる
まさか…そう思いながら媛神はそっと音がする方へ振り向いてい見ると一人の僧が走ってくるのが見えた
やっぱり…堺で会ったあの僧だ 名も知らない僧が媛神達の横を通り過ぎていった
あの僧とは何か因縁でもあるのかしら?そう媛神は思っていた これで3度目なのだ
それは潤も思っていたらしく首をかしげている

「あれは一体なんなのかなーずっと走ってるっぽいけど」

「さぁ わかりませんわ何か急ぎの用事でもあるのでしょうけど…」

「ふーむまぁいっか それにしても何もないところだねーここは」

「そうですわね でも見晴らしがよくていいですわよ 本当はあまりのんびりしたくはないのですけど このような時間も必要なのかもしれませんわね」

「そういうもんかねー…そういえば媛っちって人探しで尾張に行きたいんだよね それってどんな人なの?」

「ん?そうですわね 一言で言えば誰よりも優しい人ですわ そう本当に優しい人ですお姉さまは」

「そうなんだ媛っちってお姉さんがいたんだ」

「本当の姉妹ではありませんけどね ですけどわたくしにとってはお姉さまなのです この世で誰よりも大切な…ね」

ほぅと頬に両手を当てて媛神はのんびりと歩いていく そう本当は一刻も早くお姉さまを サクラを探したいのだが急いては事を仕損じるという言葉もある
しかし確実にお姉さまの元へ近づいているとそう思いたかった
何個目かの小さな丘を越えたところで遠くから人の声が聞こえてきた これは女性の声?
それにしてもこんなところで何をしているんだろ?でも私達も人のことは言えませんわね街道を離れこんな場所を歩いているんだし
声はこちらへと近づいて来ていた 次第にその声がはっきりと聞こえてくる これは悲鳴!?
助けてという叫び声が媛神達の元へと届いてきた 3人はお互いに顔を見合わせると声の方へ走り出す
丘を越えたところで人が走っている姿が見えた やはり女性、というより女の子だった
何が入っているのかわからないが大きな袋を大事そうに抱え女の子は走っていた
5人の男達がその女の子を追いかけている その追いかけている5人の中に人間離れした者がいる 遠くからでもわかるその大きさ
何を食べたらあそこまで大きくなれるのか…一緒に走っている者達がまるで子供のように見えるから少し滑稽だった
ドスンドスンと音を立てながら追い女の子を追いかけている

「あ、あれは一体なんですの?本当に人なのかしらあれは…」

「あたしにもわっかんないよ でもこのままじゃあの子捕まるよ」

3人一緒に走っていたのだが七海が飛び出す 二人を引き離し加速していく
その速さに媛神も潤もついて行けなかった 女の子と暴漢達の距離は徐々に詰まっていく
七海の速さをもってしても女の子と暴漢の間に割ってはいることが出来そうにない このままでは女の子が捕まってしまう
こうなったら…
媛神は持っている袋の中に手を入れその中にあった一匁弾の玉を取り出すと親指の上に置く
一匁弾の玉からバチバチと稲妻が迸る

「七海避けなさい 危ないですわよ!」

親指の上に置く一匁弾の玉から出る稲妻が激しさを増す 隣を走る潤がびっくりした声を上げていた

「な、なんなのこれ媛っち何してんのさ」

「雷砲!」

七海は暴漢達への道を空けると媛神は潤の話は聞かず親指にある一匁弾の玉を弾いた 
バシュ!という音と共に光が奔る 光は線となって女の子と暴漢の間に割り込むと地面に当たり爆発を起こした
爆風で女の子は飛ばされてしまうが七海がその女の子を受け止める
七海は女の子をその場に座らせると砂埃が舞う方をじっと見つめた
媛神と潤も女の子の所へ到着したが あたりにはまだ砂埃が舞っている
その砂埃が少づつ収まってくると人影が見えてくる かなり大きな影がそこにあった
完全に砂埃がはれ暴漢の姿がはっきりと見えた 暴漢の一人はやはり大きい 遠くから見ていたときもそう思ったが近くでみるとその大きさがさらに際立っている

「おいお前らそこの娘をよこせ!」

「やぶからぼうに何を言い出すかと思えば…そんな言い方をされてはいどうぞと渡せるわけがないでしょう」

「た、助けて…」

女の子は小さな声でそう言った 肩を震わせながらそれでもはっきりと
この一言で媛神達の方向が決定する この女の子を守ると
媛神はすっと立ち上がると暴漢達を睨みつける その前髪からはパチンと火花が飛んでいた
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