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媛神を落ち着かせながら宗右衛門は説明を始めていた
槍の修行のため香曽我部家に行き住み込みで修行をしていたのだが その香曽我部家での修行も思ったより早く終わってしまい香曽我部近安自身の師匠である宝蔵院流の師範の元へと送り出したのである
サクラ自身も修行は続けたいとの希望もあり 宗右衛門は異をとなえることが出来なかった
泣く泣く宗右衛門はサクラを送り出したのである
「そんなわけでサクラは今ここにはおらんのだよ 一様近くの徳川家に私の知り合いがいてね その人に頼んで護衛はつけてもらえることになったのだが…」
「……そんなもの役に立つかわからないではありませんの!」
「いやいやそんなことはないはずだが きっと腕のたつ者を付けてくれてる はず……」
「はず…ってお姉さまに何かあったらいかがいたしますのおじさま!いいですわ わたくしが参ります!」
「参りますって媛神ちゃんも本土に行くきか?」
「そうです まったくお姉さまもお姉さまですわ わたくしになんの相談もなしにそんな遠くへ行かれるなんて…」
「まぁあの子が決めたことだし それに媛神ちゃんは修行してる最中だったしな だから教えなかったんだと思うよ」
「いいですわ 善は急げといいますしこれから向かいますわ ではおじさま失礼いたしますわね」
お、おい媛神ちゃんと宗右衛門は呼び止めたが媛神は神速の術を使っているらしく風のように走り去った
あきれたように媛神が走り去った方を宗右衛門は見つめていた
「あの子は美濃っていうのだけで行ってしまったが大丈夫なのだろうか……」
まぁわからなければ連絡の一つもよこすだろう そう思い宗右衛門は店内へと戻っていった
媛神はとある商店の前まで来ていた その商店とは媛神の大切な人の実家
その商店の中には見たことのない品物が数多くある しかも店内には日本人だけではなく異国人の姿もちらほらと見えていた
媛神は店の前でうろうろしていた どうやってびっくりさせようと考えていたからだ
そうやってうろうろしていると店の中から男性が出てきた
「ん?君は……」
店内から出てきたのは白髪まじりの男性 しかし白髪まじりではあるが老人というわけではない
均整の取れたその顔は20代といっても差し支えない顔立ちである
「お久しぶりですわおじさま 3年ぶりですわね」
店内から出てきた男性は御堂サクラの父親 御堂宗右衛門
「おぉーやっぱりそうだったか 元気だったかな?さ」
「おじさま!」
「うお!どうしたんだい大声だして!?」
「このたびわたくし字をもらいましたの ですからそちらでお呼びくださいませ」
「おぉそうか陰陽師になるために行ってたんだったな そうかそうか字をもらったのか で、どんな字をもらったのかな?」
「媛神といいますの 以後そちらで呼んでくださると助かりますわ」
「媛神か…よい名前をもらったみたいだ で、媛神ちゃんはこんなところで何をしてたんだい?中に入ればいいものを」
「お姉さまをびっくりさせようと思いまして お姉さまはいらっしゃいますの?」
店内をのぞいて見るがそこにサクラの姿はない 振り返り宗右衛門をみるとその顔が暗く落ち込んでいた
まさかサクラの身になにかおこったのか? そう思ったとき宗右衛門が口を開いた
「サクラはここにはおらんよ……しかも四国にもおらん」
「………な、なんですって!?それはどういうことですのおじさま お姉さまは土佐に行ってるだけなんじゃないんですの?」
「うむ少し前までは土佐におったんだがな 今は本土におるよ たしか美濃だったか…そこに行くと信書が来てたな」
「な……どうしてそんなことになってますのおじさま! おじさまってば!?」
媛神の前髪からバチンと火花が飛ぶ 宗右衛門はびっくりして媛神から飛び退いた
「お、落ち着いて さ…い、いや媛神ちゃん 説明するから落ち着きなさい」
社の中 二人の人物が向かい合っていた
一人はここの主 そしてもう一人は少女である
「お主がここへ来て3年…もはやお主に教えることは何もない」
ふぅとためいきをつき主は少女を見つめた この目の前にいる小さな少女の力は計り知れない
基本的に強い力を持っていたとはいえそのコントロールは難しい
特に大きな力を持つとそのコントロールは難しさを増す それをこの少女は3年で終わらせ更なる高みを目指せる可能性を見せていた
「普通ここでの修行はかるく10年はかかる しかしお主はそれを3年で終わらせてしまった」
少女はじっと主を見つめていた
「ここでの修行は本日をもって終了する しかしこれで陰陽道を究めたと思っていたら大間違いだ 本土には貴様より強い力を持った者がいると聞く おぬしは旅に出るのだ そして見聞を広めるが良い」
主は一息つくとさらに言葉を続けた
「それから一つお主に贈るものがある」
「贈るもの…ですか?」
「あぁ貴様に字を贈る 本日よりその名を名乗るが良い これがそうだ」
主が差し出したものは符 それには文字が書かれていた 大きく2文字の漢字
【媛 神】 そこにはそう書かれたあった
「ひめ……がみ?」
「そう媛神だ そしてこれより貴様の元の名は真名になる 真名は魂の名前 貴様が心から信頼にたると思える人物以外にけして知られてはならぬ」
少女……媛神は小さくうなずいた
「では行くがよい媛神よ 貴様の旅が実り多きものであることを祈っている」
媛神は主にふかぶかと頭を下げ そして社を出た 外に出ると媛神はおおきく背伸びをした
「ようやく終わりましたわ まったく予定では2年で終わらせるつもりでしたのに……結構長くかかりましたわね」
媛神は一度振り返り社に向かって一礼をする そして今まで過ごしてきた山を降りていく
媛神には修行を終えると向かうべき場所があった そこは彼女の大好きな人のいる場所
「きっとそろそろ帰ってきてますわよね わたくしの知らない間に土佐に行くだなんて まったくお姉さまったら」