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疾風刃雷

四国最大の霊場の一つ 霊峰石鎚山
その石鎚山にある石鎚神社には多くの参拝客が毎年訪れる 平和な光景だ
しかしこの石鎚山には神社以外にも建物がある それは弥山の近くに建てられた社だ
その社では数人の人間が暮らしている そこでおこなわれていること それは修行
陰陽師になるための修行である
その社に集められる人間は四国中から選りすぐられた一握りの人間 主に霊力の高い子供が集められる
そして何年もの月日をかけ陰陽師としての修行が続けられる その修行は苛烈を極める 途中で脱落する者も多い
その修行する子供の中に一人の少女がいた このような場所に不釣合いな娘 しかしその娘の目には強い意志が宿っていた
ある人を守りたい そのために力がいる
その誓いとも決意ともいえるもののために少女はここにいた
少女は普通の人間とは違っていた 強い霊力を持つがゆえに疎まれ蔑まされてきた
バケモノ 人間じゃない そういわれながら育ってきた 自分の持つ力を恨んだこともあった だがこの力には何か意味があるはず そう思いながら少女は生きてきた 

そんな少女にも一つの出会いがあった
それは少女と同じように人から蔑まされている人だった その人は別に強い力を持っているわけではない
ただその容姿のために蔑まされているのだ 金髪の髪と藍眼を持つがゆえに
しかしその人はその姿を誇りに思っていた 自分の母親から譲り受けたその姿を
少女はその人を見ていた その人は他者を恨んだりしている様子がない なぜこの人はこのように強く生きていけるのか? 少女にはそれが不思議だった
ある日少女はその人に問いかけた

「なぜ言われたい放題にしてますの?貴方はそれでいいんですの?なんならわたくしが黙らせてさしあげますけど?」

その人は小さく首をふった そして笑顔で少女に答えた

「そんなことしちゃダメよ 私はなんともないから大丈夫 今は誤解があるだけだかラ」

「誤解もなにもないでしょう こんなことがずっと続くかもしれないのよ?それでも貴方は同じことを言えるかしら?」

「えぇ言えるわ 人間はそんなに馬鹿じゃない きっと分かり合えるわよ私の両親のようにネ」

その人は胸をはってそういった その藍眼には強い意思がありその決意は固かった
その人は少女をみてふっと笑った その笑顔はまるでこの世のものとは思えない美しさがあった 風になびく金髪が日の光を浴びてキラキラと輝いている 少女はこの笑顔を一生忘れることはないだろう

「そういえば名前言ってなかったわネ 私の名前は御堂サクラ あなたハ?」

「私の名前は………」

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疾風刃雷

阿波から出る船に一人の少女が乗っていた 黒を基本とした束帯に身を包み 菩薩の錫杖を手にしていた
陰陽師と一目でわかる格好のその少女は船の先端に立ち静かに海を見ていた

「おじょうちゃんそんなところに立ってると海に落っこちるぞ?」

船頭がその少女に声をかける 少女が不安定な場所で立っているので声をかけたのだが 少女は一瞥するだけでその場所から動こうとはしなかった
やれやれ落ちても助けないからなと船頭はいい自分の仕事に戻っていった
それでも少女はやはり海を見ていた

「この先にいますのね まったくお姉さまったらわたくしを置いて一人で旅に出るなんて…」

プンスカと怒り始めたかと思うと今度は一転してクスクスと含み笑いをはじめた

「ふふふ……ですけどお姉さま 今まいりますわよ待っててくださいね」

少女はまた海を見つめた 早く、もっと早く進めと祈りながら


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