「……わ、私には無理ヨ」
サクラは泣きながらまおに言った サクラは今まで蘇生、転生の術を使ったことがない どうすればいいのかその知識だけはあるのだが
「サクラちゃん貴方は今まで何をして何を見てきたの?薬師になるために修行を積んできたはずでしょ?」
「でも…でも…私には無理よできっこなイ」
首をふり私には出来ないといい続けるサクラ そんなサクラをまおは静かにみていたが
パンという音が洞穴内に響く まおの平手打ちの音だった サクラは頬が熱くなるのを感じる
ジンジンと痛む頬を押さえながらサクラはまおを見上げる
「サクラちゃん!そんな弱気でどうするの純菜ちゃんを助けたいと思わないの!?」
「それハ……」
「助けたいのでしょ?それなら今、貴方がやらないで誰がやるの!誰が純菜ちゃんを助けられるの?貴方しかいないでしょ!」
確かに今この場で蘇生、転生の技を扱えるのはサクラしかいない 助けたい思いはサクラも一緒だった
しかし出来るだろうか? 失敗すれば純菜は…
その考えを見透かしたようにまおが言った
「大丈夫貴方なら出来るわきっと純菜ちゃんを助けられる 自分を信じて、そして純菜ちゃんを助けたいという思いを、きっと出来るから」
まおは微笑みうなずいた 自信を持てとそういっているようであった
「………私…私やってみまス」
「貴方ならきっと出来る 自分の持てる力を全力全開にして純菜ちゃんを助けなさい!」
サクラは涙を拭き純菜をそっとねかせた そしてスクッと立ち上がると自分に言い聞かすように言った
「今から蘇生準備に入りまス!」
必ず助ける サクラはそう固く誓った
目の前に横たわる傷ついた純菜を見つめる この目の前に倒れている人に会わなければ薬師を目指そうとは思わなかった
そして今、傷つき倒れているこの人を助けられるのは私だけだ サクラはふと薬座頭から聞いた話を思い出していた
「いいですかサクラどの」
薬研の中で薬座頭は静かに語り始める
「薬師には蘇生、転生といった術があります、これはとても高度な技能と力を必要とします」
「フムフム」
「治療とは人を癒すためのもの その技を高めたものが蘇生、転生といえるでしょう、しかしその技にも限界があります」
「限界?ですカ??」
「そうです、生きる意志のないもの 天寿をまっとうしたものには意味のないものなのです」
「そうなのですカ?では、天寿をまっとうしてなく不慮の事故とかで亡くなった場合なら大丈夫なわけですネ?」
「さよう、ですが術とはやはり人が扱うもの、絶対はありえないのですよ」
サクラは考え込んだ 生きる意志があり蘇生、転生を使えば呼び戻すことが出来る であればそれは誰しも喜ぶことではないか?だが薬座頭は絶対はないという どういうことなのだろう?
「なぜでス?その技さえあれば呼び戻すことができるのでしょウ?」
「さよう この技にはその力があります しかし扱う人の技能、力が及ばない場合は違います」
「力不足だとどうなるのですカ?」
薬座頭は悲しそうな顔をしながらサクラの質問に答えた
「その者の魂は肉体には戻らず、輪廻の枠から外れ永遠に彷徨い続けることになるでしょう」
「もう二度と魂は戻ることはない……ト?」
「そのとうりです、悲しいことですがそうなります サクラ殿はそうならないよう今以上の精進が必要ということですな」
「は、はい!頑張りまス!」
「では今日はここまで 純菜殿がお待ちのようですぞ」
「はい、ありがとう御座いましタ」
成功すればよし、だが失敗すれば純菜の魂は輪廻の枠から外れてしまう、そうなれば純菜の魂は二度と戻ってくることはない
しかし純菜はかならず呼び戻す まだ純菜の寿命が尽きたわけではない 純菜に生きる意志がなくなったとも思えない
今ここで何もしなければ絶対に後悔する それをまおが教えてくれた
そのまおの期待を裏切るわけにもいかない サクラは右手を純菜へとかざし左手で剣印を結ぶ
ふぅーと息を吐くと術に集中するため瞳を閉じた
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