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疾風刃雷

「ふぅ~~ 落ち着いた~」

そう目の前の女の子は言った 女の子の前には食べ終わったあとの空箱が散乱していた
この細い体のどこに入っていくのだろう?そう思える食欲だった 今はお茶をずずっと飲んでいる
まったくなぜ倒れるまで何も食べないでいたのか…媛神はあきれた顔で散乱している空箱を見ていた
七海には何回もお弁当を買うため走ってもらったのだが 七海一人で買いに走らせるのも悪いなと思い途中かわって買いに行くといったのだが

「女の子を走らせるわけにはいかないよ それに走ることも修行の一部だし 大丈夫ボクにまかせてよ」

そう言い最後まで走っていた 今は自分の分のお弁当を食べ終え女の子と同じようにお茶を飲んでいた
女の子はお茶をグッと飲み干すとぺこっと頭を下げる

「いやー助かったよー ほんとに死ぬかと思ったね」

「助かったよーではありませんわまったく…倒れるまで何も食べないなんて何をしてたんですの?」

「………んーっ」

額に指をあて考え込む女の子 そこまで考える必要があるのだろうかと媛神は疑問に思ったのだが女の子は真剣に考え込んでいる
ぽんと手をうち女の子は言う

「あそこだよ 伊賀の国境までは路銀があったんだよ そんでねーそこでお金が尽きちゃって町までつけば何とかなるかと思ったんだけどねー でも歩けど歩けどなーんもなかったんだよー 堺に行きたかったんだけどいつの間にか紀伊に入ってて それから話を聞いてなんとかここまで来たんだけどここで意識がなくなったみたいだね いやー実際大変だったよ あはははは」

「あははははじゃありませんわまったく……」

「堺ならもう少し歩けばつくよ」

「おぉ場所知ってるんだ やたー連れてって連れてって うぅ…やっと堺につけるよーあ、あたしは神楽坂潤っていうんだ 潤って呼んでおくれよ 夢は最高で最強の刀鍛冶になることさ よろしくな」

潤はそういってさらしで巻いただけの大きな胸をぽんと叩いて言った 野垂れ死にしそうだったのに最高の鍛冶屋ってどういうことですの?と媛神は思ったが口には出さなかった

「ボクは氷城七海、いちよう武芸者ですよろしく」

「わたくしは媛神といいます よろしく御願いしますわ」

「ななみんと媛っちだね よろしくーで、媛っちはその姿から察すると陰陽師見習いってとこ?」

「初対面の人に媛っちってどうかと思いますけど まったく……えぇ潤の言う通りわたくしは陰陽師ですわ でも見習いではないですわよ」

「へ?そうなんだ まぁ媛っちも最強の陰陽師目指してるんだろ?」

「いいえわたくしはそんなもの目指してませんわ 日々精進していれば誰でもその道を極めることが出来ます それで満足できるか出来ないかはその人次第ですけどね」

「んーまぁそういう考えもありなのかなーでも目標があるっていいことだと思うけど そんなのは媛っちにはないの?」

「………そうですわね、しいてあげるとすれば……魔人ですか」

「まじん?………ってそれなに?」

「昔とある本を読んだとき書いてありましたの」

「本って……あたしはその手の物は苦手だなーで、なんて書いてあったの?」

「異国の本なのですけどそれによるとわたくし達陰陽師に似た人が異国にもいるらしいのよ その本には魔術師と書いてありましたわね そしてその道を究めた人のことを魔人と、そう呼ばれたそうですわ」

「そっかーそれが媛っちの目標なんだ なんだかよくわかんないけどすごそうだ」

「すごいのかどうかわたくしにはわかりかねますけど そんなことは些細なことですわ そんなものより大切なことがわたくしにはありますから」

そういうと媛神は東の方を見つめる 真剣な媛神の顔をみて潤はそれ以上なにも言わなかった

「じゃそろそろ食後の休憩もいいかな?潤さんも大丈夫そうだし堺へ向かおうか」

「そうですわね では参りましょう」

そういうと媛神はお弁当の空箱(ほぼ潤が一人で食べたのだが)を一箇所へ集めるよう指示すると 七海と潤に少し離れるように言い空箱へと手をかざす
ボン!という音と共に空箱は一瞬で灰になり風に流されていってしまった
潤は媛神が見習いではないということを実感していた そして3人は堺へと向かって歩きはじめる
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