早朝 お寺の境内から元気のいい声が聞こえてくる
そこには二人の人物がいた、二人は長い棒を持ち互いの出方を窺っている
一人は少女 もう一人は僧である
対峙していた二人 先に動いたのは少女の方であった その少女のくりだす鋭い突き 必殺といえるほどの突きが僧を襲う
しかし僧はその突きを読んでいたのか その突きを右へ払い、面を撃つ しかしそれは素早く引き戻した少女の棒によって防がれた
「おみごと」
この少女はサクラであった 岡崎へ来て数ヶ月虎裁禅師のもとで槍の修行をしていた
虎裁禅師も仕事があるため早朝と夕方にしか稽古をつけられない
「ありがとう御座いましタ」
そういうとサクラは虎哉禅師にふかぶかとお辞儀をした
「上達しましたなサクラ殿 そろそろ本気でいかないと危ないかもしれません」
「またまたご冗談を 私なんてまだまだですよ」
虎哉は当初 槍術を教えてくれと頼むこの娘に対して不安があった
異国の者と思えるこの娘に果たして槍が扱えるのか?そう思っていた
しかし毎日教えているうちにその考えは変わっていった 見る間に上達していくサクラを見て 虎哉はその覚えの早さに人並みならぬものを感じていた
「さて、今日はここまで そろそろ時間ではありませんか?」
「あ!はい 有り難う御座いましタ では、また夕方に参りますのでお願いいたしまス」
「はいはい お待ちしております」
サクラはお寺の境内を後にした 虎哉はその後姿を見送りながらそろそろ拙僧を越えるかもしれない
そう思いつつ走り去る少女を見つめていた
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