サクラはへなへなとその場にしゃがみ込んでしまった やっと会えると思っていた先生に会えなかった、しかも今度は何処へ向かったのかさえ分からない これからどうしたらいいのだろう?サクラは途方にくれた
落ち込むサクラの側で純菜が心配そうに見ている その隣では困った顔の虎裁が立っていた
「そ、そんなァー やっと…やっと会えると思ってたノに もう、伊予に帰るしかないのかなァ…」
落ち込むサクラを見ていた純菜 せっかくここまで来たのだ何かいい考えはないかと頭の中で考える
そしてふと思ったことを口に出してみた
「サクラちゃん、同じ宝蔵院流の人ならいいんじゃないかな? たとえば…」
そう言い純菜は虎裁の顔を見る 虎裁は頭をぶんぶんとふりながら答えた
「拙僧の力など とてもとても… だが葵殿なら…ちと待っていてくだされ」
そういうと虎哉は本堂へと走って行った 残されたサクラに純菜はやさしく語りかける
「サクラちゃん、ここまで来て習わないで帰るのって勿体ないじゃない? その先制のお弟子さんがいるんだし その… 先生は何処に行ったかわからないけど… 同じ流派には変わりないわ」
そうだ、ここまで来て帰る訳にはいかない 何も出来ませんでしたと帰っていては香曽我部様にも顔向けできないし 快く送り出してくれたお父様にも申し訳ない 先生は何処に行ったのか分からないが幸いここにはその弟子がいる その弟子から槍術を教えてもらえればいい
そして待っていればその先生もここにいつか帰ってくるかもしれない サクラはうつむいていた顔を上げた
「そうよねここまで来たんだもノ…何もしないで帰るなんてダメよネ 純菜ちゃンあり難う」
「落ち込んでる姿なんてサクラちゃんには似合わないわ あ、帰ってきたみたい」
難しい顔をしたまま本堂から虎哉は帰ってきた 何かぶつぶつ独り言をしゃべっている
「二人して何処かへ行かれたようだ…あの二人が向かうとはこれはただ事では無いのかもしれん・・」
「虎裁さん お願いがありまス」
「はい、なんでしょう?」
「虎裁さんが教えてもらった宝蔵院流のすべてを私に教えてもらえませンか?」
「むぅ 先ほども申し上げた通り、拙僧にはそんな力はないと申し上げたはず…」
「お願いします! 教えてもらったことだけでもいいんです! お願いします!」
サクラは虎哉に頭を下げ懇願した 隣にいた純菜も同じように頭を下げ虎裁に頼み込む
「私からもお願いします この方は遠方から遙々ここまで来られたんです お願いします」
娘2人に頭をさげられ虎裁はどうにも困った 無下に追い払うわけにもいかず虎裁は考え込む
そして娘達を見ながら ふぅ~とため息をついた
「仕方ありませんな 可能な限りお教えしましょう ただし拙僧にも仕事が御座いますその合間でいいのならですが…如何ですかな?」
「はいそれで結構でス よろしくお願いいたしまス」
サクラと純菜は手を取り合い喜んだ 喜ぶ2人の娘を苦笑まじりの顔で虎裁は眺める
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