サクラは三河への道を歩いていく 美濃での教訓を活かしこんどは街道を歩いていた
尾張の山に挟まれたその街道は曲がりくねりながら三河へと続いている
途中一軒の茶屋があったので休憩を取ることにした
茶屋親父におにぎりを注文し出来上がるのをのんびりと待つ ほどなくして茶屋親父がおにぎりを持ってきので代金を払おうとしたのだが大きいお金しかなくそれを渡しお釣りをもらう
そして受け取ったおにぎりとお釣りを長椅子に置きのんびり食べようとしたその時
「おい娘! あれ、あれを見ろ!…すげぇ! なんだありゃ!? ほらあんたも見てみろよ! 山の向こうに…ほら…な!?」
茶屋の側にいた男が山を指差しながら叫んでいた サクラは気になり男の指先を追っていく
だがそこには何も無かった 何もないじゃない!そう男に怒鳴りながら振り向いて見ると男の様子が何かおかしい ふと長椅子に目をやるとそこに置いてあったお釣りの500文が無くなっている
「貴方…お金取ったでショ?…」
「・・・は? 俺様が、あんたの金を取ったって? 妙な言いがかりをつけるんじゃねぇよ なんなら…やるか?」
「ちゃんと返せば痛い目にあわないかモよ?」
「・・・はん、奪い返せるもんなら、奪い返してみな!」
「っていうことはやっぱり取ったんじゃナい!嘘つきは泥棒の始まりなんだからネ!」
うるせぇ!と 男は言いながら襲いかかってきた こんなこともあろうかとサクラは武器として小刀を用意していた
それを懐から取り出し男が繰り出す槍を受け止めた が、やはり女の力では勝てない 身体を捻り槍を受け流すと同時にしゃがみ込みながら小刀の柄で男の腹を強打した
腹を押さえてしゃがみ込む男の横に立ち小刀を突きつける
「まだやる? 女だからって甘くみたのが間違いだったわネ」
「参った…こ、これで勘弁してくれ…」
そういうと男は一つの荷を置きそそくさと去っていった この男の名は藤村佐樹氏 どうやら他でも盗みを働いていたらしい
「ちょ、ちょっと待ちなさイよ!こんなもの私に渡してどうするのよォ!!」
藤村佐樹氏は振り返りもせず一目散に逃げていた もうかなり遠くまで逃げている
サクラは途方にくれた まさかこんな置き土産をしていくとは思っていなかったからだ 藤村の置いていった荷を見ながらため息をつく
「こ これどうしたらいいノよ…どうにかして持ち主を探すしかないわネ」
仕方なくその荷を手に取り三河を目指して歩いて行った
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