それは男性であった 姿から侍であることが分かる サクラより頭二つ分高い男性 その人が酔っ払いの手を掴んでいた
「娘を相手に… 情けないでござるな…」
酔っ払いは男の手を振り払うとしたがその手は振り解けなかった 男はさほど力は込めてないように見える それでもぴくりとも動かない 酔っ払いは必死に手を動かそうとしながら叫んでいた
「て、てめぇ 離しやがれ!」
男は酔っ払いの手を離すと酔っ払いとサクラの間に割ってはいるように立ちふさがった
「何があったか分からないでござるが だいの大人が娘相手に情けないでござろう」
「うるせぇ! おぉ? なんだ!貴様が相手になるっていうのか?」
「話し合いで終わらせようと思ったのでござるが 必要とあらば…」
そういうと男は少し腰を落とし半身に構えた そして一言
「こられよ」
酔っ払いは懐からあいくちを取り出し襲い掛かってきた 男はそれを紙一重でかわしあいくちを持つ手に手刀を浴びせる 酔っ払いはうなりながらあいくちを落としてしまった これは勝てない・・ 酔っ払いは覚えてろよ!という棄て台詞を吐きながら去って行った
男は振り返るとサクラに手を差し伸べた
「大丈夫でござるか?」
「えぇ 大丈夫 ありがとう御座いまス」
「いえいえ では、拙者は先を急ぐので これにて」
サクラを引き起こすと男は去って行こうとした
「あ、せめてお名前だけデも」
「名乗るほどの者ではござらんよ では、失礼」
そういうと男は足早に去っていった そして人ごみにまぎれて見えなくなってしまう
やさしい人もいるのね サクラはそう思いながら男がさった後を見つめている
だがこの後 この男とサクラは再会を果たす そしてこの男の力を貸してもらうことになるのだが それは後日の話となる
男の名は 本郷秀人 徳川家の剣客である
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