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社の中 二人の人物が向かい合っていた
一人はここの主 そしてもう一人は少女である
「お主がここへ来て3年…もはやお主に教えることは何もない」
ふぅとためいきをつき主は少女を見つめた この目の前にいる小さな少女の力は計り知れない
基本的に強い力を持っていたとはいえそのコントロールは難しい
特に大きな力を持つとそのコントロールは難しさを増す それをこの少女は3年で終わらせ更なる高みを目指せる可能性を見せていた
「普通ここでの修行はかるく10年はかかる しかしお主はそれを3年で終わらせてしまった」
少女はじっと主を見つめていた
「ここでの修行は本日をもって終了する しかしこれで陰陽道を究めたと思っていたら大間違いだ 本土には貴様より強い力を持った者がいると聞く おぬしは旅に出るのだ そして見聞を広めるが良い」
主は一息つくとさらに言葉を続けた
「それから一つお主に贈るものがある」
「贈るもの…ですか?」
「あぁ貴様に字を贈る 本日よりその名を名乗るが良い これがそうだ」
主が差し出したものは符 それには文字が書かれていた 大きく2文字の漢字
【媛 神】 そこにはそう書かれたあった
「ひめ……がみ?」
「そう媛神だ そしてこれより貴様の元の名は真名になる 真名は魂の名前 貴様が心から信頼にたると思える人物以外にけして知られてはならぬ」
少女……媛神は小さくうなずいた
「では行くがよい媛神よ 貴様の旅が実り多きものであることを祈っている」
媛神は主にふかぶかと頭を下げ そして社を出た 外に出ると媛神はおおきく背伸びをした
「ようやく終わりましたわ まったく予定では2年で終わらせるつもりでしたのに……結構長くかかりましたわね」
媛神は一度振り返り社に向かって一礼をする そして今まで過ごしてきた山を降りていく
媛神には修行を終えると向かうべき場所があった そこは彼女の大好きな人のいる場所
「きっとそろそろ帰ってきてますわよね わたくしの知らない間に土佐に行くだなんて まったくお姉さまったら」
四国最大の霊場の一つ 霊峰石鎚山
その石鎚山にある石鎚神社には多くの参拝客が毎年訪れる 平和な光景だ
しかしこの石鎚山には神社以外にも建物がある それは弥山の近くに建てられた社だ
その社では数人の人間が暮らしている そこでおこなわれていること それは修行
陰陽師になるための修行である
その社に集められる人間は四国中から選りすぐられた一握りの人間 主に霊力の高い子供が集められる
そして何年もの月日をかけ陰陽師としての修行が続けられる その修行は苛烈を極める 途中で脱落する者も多い
その修行する子供の中に一人の少女がいた このような場所に不釣合いな娘 しかしその娘の目には強い意志が宿っていた
ある人を守りたい そのために力がいる
その誓いとも決意ともいえるもののために少女はここにいた
少女は普通の人間とは違っていた 強い霊力を持つがゆえに疎まれ蔑まされてきた
バケモノ 人間じゃない そういわれながら育ってきた 自分の持つ力を恨んだこともあった だがこの力には何か意味があるはず そう思いながら少女は生きてきた
そんな少女にも一つの出会いがあった
それは少女と同じように人から蔑まされている人だった その人は別に強い力を持っているわけではない
ただその容姿のために蔑まされているのだ 金髪の髪と藍眼を持つがゆえに
しかしその人はその姿を誇りに思っていた 自分の母親から譲り受けたその姿を
少女はその人を見ていた その人は他者を恨んだりしている様子がない なぜこの人はこのように強く生きていけるのか? 少女にはそれが不思議だった
ある日少女はその人に問いかけた
「なぜ言われたい放題にしてますの?貴方はそれでいいんですの?なんならわたくしが黙らせてさしあげますけど?」
その人は小さく首をふった そして笑顔で少女に答えた
「そんなことしちゃダメよ 私はなんともないから大丈夫 今は誤解があるだけだかラ」
「誤解もなにもないでしょう こんなことがずっと続くかもしれないのよ?それでも貴方は同じことを言えるかしら?」
「えぇ言えるわ 人間はそんなに馬鹿じゃない きっと分かり合えるわよ私の両親のようにネ」
その人は胸をはってそういった その藍眼には強い意思がありその決意は固かった
その人は少女をみてふっと笑った その笑顔はまるでこの世のものとは思えない美しさがあった 風になびく金髪が日の光を浴びてキラキラと輝いている 少女はこの笑顔を一生忘れることはないだろう
「そういえば名前言ってなかったわネ 私の名前は御堂サクラ あなたハ?」
「私の名前は………」